2011年10月24日月曜日

平爺

そもそも平爺にメモリーという概念は無い。

餌か餌じゃないかしか無い。

昆虫と一緒である。

自分が今何をしているかも分からないし、何をしてきたかも、何者かも、思い出も、記憶も、感情すらも何も無い。

あるのは餌か餌じゃないか。

喰えるか、喰えないか。

平爺は乳母車に乗せられている。

いや、乗せられているのかすら分かってはいない。

もしかしたら自ら乗り込んだのかもしれない。

後ろから押してくれてるあなたは誰ですか。

私は彼と関わりの可能性がある人達に話を聞いて廻った。

しかし誰も彼の事を知らなかった。

誰も彼を知らない。彼も誰も知らない。

果たしてそれは生きているといえるのだろうか。

それはもう死んでいるのと同じではないだろうか。

人間として。

じゃあ花は?蜜蜂は?カメレオンは?ナマケモノは?

平爺は呼吸をしてる。

心臓が絶えず動いてる。

目を覚まし、陽の光を浴びて、喰って、眠って、また喰って。

それだけだけど。

平爺はそれだけだけど!

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