そもそも平爺にメモリーという概念は無い。
餌か餌じゃないかしか無い。
昆虫と一緒である。
自分が今何をしているかも分からないし、何をしてきたかも、何者かも、思い出も、記憶も、感情すらも何も無い。
あるのは餌か餌じゃないか。
喰えるか、喰えないか。
平爺は乳母車に乗せられている。
いや、乗せられているのかすら分かってはいない。
もしかしたら自ら乗り込んだのかもしれない。
後ろから押してくれてるあなたは誰ですか。
私は彼と関わりの可能性がある人達に話を聞いて廻った。
しかし誰も彼の事を知らなかった。
誰も彼を知らない。彼も誰も知らない。
果たしてそれは生きているといえるのだろうか。
それはもう死んでいるのと同じではないだろうか。
人間として。
じゃあ花は?蜜蜂は?カメレオンは?ナマケモノは?
平爺は呼吸をしてる。
心臓が絶えず動いてる。
目を覚まし、陽の光を浴びて、喰って、眠って、また喰って。
それだけだけど。
平爺はそれだけだけど!
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