今日の帰りは満員電車だった。
僕の前後左右は不特定多数の人々で溢れ返っている。
まず何より気になるのが車内のニオイ。
皮脂、香水、汗、口臭、煙草、加齢臭、化粧のニオイ。
そのニオイが混合して僕の鼻の穴を不法侵入する。
といっても鍵は開けっ放しなのだが…。
僕の後方には20代と思わしき、顔の整った美しいOLがいた。彼女もまたニオイと圧力の被害者である。
僕は背中に意識を置きながら、痴漢で捕まった時のシュミレートをしていた。
裁判所での振る舞いと家族への言い訳を考えている最中、意識していた背中、いや右肩に重みを感じ、僕はそっと右手に目をやった。
右肩に携帯電話が乗っている。何故だろう。
しかし疑問は直様解決した。
後方にいるOLの携帯電話であった。
美しいOLが僕の右肩の湾曲を利用して携帯電話を操作している。
このOLは一体何を考えているのだろうか。
図々しいことこの上ない状況下で一念発起、僕はOLに注意することにした。
「すいません。やめて下さい。」
この言葉を発した瞬間、車内に嫌な緊張感が走る。
我ながらよく言ったものだと思っていた一瞬の静寂の後、僕はOLの次の言葉に耳を疑った。
「この人、痴漢です!」
すかさず周辺の乗客が僕を取り押さえる…
無実を証明しようとしても、もう手遅れ。
僕の痴漢シュミレートは水泡に帰したのであった…。
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