2011年7月15日金曜日

膝枕

今、私は見知らぬ人を膝枕している。

電車の座席の一番端に座り、私は売店で購入した雑誌を開いた。

私の隣には30代ぐらいのメガネを掛けた男性が座っている。

男性は酔っているせいか、フラフラしていて、今にも倒れ込みそうだ。

私は隣の男性を警戒しながらも、雑誌に集中することにした。

雑誌を読みはじめて数分後、突然ドスンと肩に重みを感じた。

驚いた私がチラリと横目で確認すると隣の男性が私の肩に寄りかかっているではないか。

なんだこれは?

私は見知らぬ男性を肩で寝かせている。

まるで恋人みたいだ。

なんて悠長なことを言ってる場合ではない。

すかさず私は肩をぐるぐるまわし、男性を起こす作戦にでた。

男性が起きたときに気を悪くしない程度に優しくぐるぐるする。

すると、眠っている男性の側頭部がズルズルと滑り落ちていくではありませんか。

男性の側頭部が私の上腕部、胸部を滑り落ち、太もも辺りで停止する。

最悪の状況だ。作戦が裏目に出た。

まさに膝枕の格好である。

なんということだ。まるで人前でイチャイチャするカップルみたいじゃないか。

だが、幸いにも私たちが乗っている車両は乗客がまばらで、私たちを見ている者は誰もいない。

しかし、男性同士の膝枕というのはどうも見栄えが悪い。

私は一念発起し、男性を膝でカクカクして起こす作戦にでた。

貧乏揺すりの要領で膝をカクカクする。

男性の頭は上下運動を繰り返すが、起きる様子はない。

私は構わず膝をカクカクする。

上下運動を繰り返す男性の頭。まるで起きない。

私は、なんで見知らぬ男性の頭をカクカクしているのだろうか。

なんで男性は起きないのだろうか。

様々な疑問が脳内をダッシュした結果、私はこの状況を受け入れることにした。

他人の目なんか気にしない。

他人の評価がなんだっていうんだ。

そして私はこの男性を愛しているのだと思い込むことにした。

そう思うと、だんだんと男性の寝顔、メガネまでもが愛おしく思え、膝枕をしていることが何ものにも変えがたい幸福なことだと感じるようになった。

そう、私はいま、幸せの中に生きている。

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