最近、リョウコの行動がおかしい。
ご飯も作らず、洗濯や掃除もしない。
帰りも遅くなった。
携帯電話に電話を掛けてもドライブモード。
私が忍者をやっていることを不満に思っているなら言ってくれればいいのに。
幸か不幸か私は忍者、尾行が得意だ。
意を決して私はリョウコを尾行することにした。
てくてく…。
(いた…。リョウコだ。)
私は息を潜め、電柱の陰からリョウコの後ろ姿を見つめている。
はたからみれば忍び装束に身を包んでる怪しい中年。
しかし私には、そんなことを気にする余裕がない。リョウコのおかしな行動を暴くという信念がある。
リョウコは駅前のロータリーで立ち止まった。
誰かと待ち合わせをしているように見える。
(むぅ…。怪しい…。)
そこに一人の少女がやってきた。
「え…?」
少女の姿を見て、私は思わず声を漏らしてしまった。忍び失格である。
(なんで、梅子が?)
梅子は私の娘であった。
そして梅子の後ろには背広姿の若い男性。親しげにリョウコや梅子と談笑している。
誰だアイツは。
背広姿の男性は、見るところによると人柄が良さそうな顔をしている。そして私と違い清潔感も漂っていて、なによりリョウコと梅子が楽しそうだ。
まさか、アイツとリョウコが。
私は心が鎖かたびらで締め付けられる感覚に陥った。実際にも鎖かたびらを着けている。
正直言って不安しかなかった。
私は、あの爽やか背広男の魔の手から愛する家族を守る為、闘うことを決意した。
この闘いは忍者として闘うのではなく、一人の漢として闘うのだ。
うりゃー!!
私の拳は爽やか背広男のテンプルを貫いた。
リョウコと梅子は何が起きているのか状況が掴めていない。
しかし、そんなことはお構いなしに私は爽やか背広男をマウントポジションで殴りつける。
爽やか背広男の顔面は、みるみる地面にめり込んでいった。
リョウコと梅子が叫んでいる。
脳からアドレナリンとエンドルフィンが分泌されていたため、彼女たちの声は私の耳には届かない。
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