妻が家を出て一週間が過ぎた。
私が出張先から帰宅すると家の中の家財道具が全て消え、代わりに小さな卓袱台だけが残されていた。
その上には、お弁当箱と手紙。
「もう戻ることはありません」
落ち着く為に、ひとまずランバダを踊ってみた。
しかし状況は変わらない、ただ汗ばんだだけだった。
シャワーを浴びながら汗と共に流す妻への罵詈雑言。
小さな卓袱台の前に戻り、お弁当箱に手を延ばしてフタを開いた。
お弁当箱の中に蘇る妻との思い出。
泣いたなぁ。怒ったなぁ。笑ったなぁ。
私は残りの、お弁当を一気に頬張る。
初めて味のしない、お弁当を食べた。
業者が家具を一つ、一つ持ち出していく。
家の中は小さな卓袱台を残し、とうとう空っぽになった。
夫は動揺してランバダを踊ってしまうのだろうか。
そんな姿を想像すると、何だか笑いが込み上げてくる。
そうだ最後にお弁当を作ってあげようか。
どうせなら、無味無臭のお弁当を食べさせよう。
具を敷き詰めながら思い出す夫との生活。
初デート。初キス。プロポーズ。
いけない、お米が塩味になっちゃった。
あの日二人は家具を見に行った。
新生活。期待。不安。
最後に大きな卓袱台を購入。
帰宅後にふたりでお弁当を食べた。
お弁当は残しておこう。
もうそろそろ帰ってくる頃だから。
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