2012年4月16日月曜日

一週間と残りのお弁当

妻が家を出て一週間が過ぎた。

私が出張先から帰宅すると家の中の家財道具が全て消え、代わりに小さな卓袱台だけが残されていた。

その上には、お弁当箱と手紙。

「もう戻ることはありません」

落ち着く為に、ひとまずランバダを踊ってみた。
しかし状況は変わらない、ただ汗ばんだだけだった。

シャワーを浴びながら汗と共に流す妻への罵詈雑言。

小さな卓袱台の前に戻り、お弁当箱に手を延ばしてフタを開いた。
お弁当箱の中に蘇る妻との思い出。

泣いたなぁ。怒ったなぁ。笑ったなぁ。

私は残りの、お弁当を一気に頬張る。

初めて味のしない、お弁当を食べた。


業者が家具を一つ、一つ持ち出していく。

家の中は小さな卓袱台を残し、とうとう空っぽになった。

夫は動揺してランバダを踊ってしまうのだろうか。

そんな姿を想像すると、何だか笑いが込み上げてくる。

そうだ最後にお弁当を作ってあげようか。

どうせなら、無味無臭のお弁当を食べさせよう。

具を敷き詰めながら思い出す夫との生活。

初デート。初キス。プロポーズ。

いけない、お米が塩味になっちゃった。


あの日二人は家具を見に行った。

新生活。期待。不安。

最後に大きな卓袱台を購入。

帰宅後にふたりでお弁当を食べた。

お弁当は残しておこう。

もうそろそろ帰ってくる頃だから。

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