最近わたしのアタマの中をひとつの言葉がループザループしている。
「夫と離婚したい」
結婚して約5年。夫婦ふたりで子どもはいない。旦那はきちんと仕事をするし休みはふたりで出掛けたりもする。何が不満なのか聞かれたら何も答えられない。けどずっと離婚したいと思っている。わけのわからないこの感情を友だちにも相談したりしている。けど結局何も解決しないまま時だけが過ぎる。
「このままではダメだ!」
そう思った私はこのわけのわからない気持ちを整理する為に将棋を始めた。
将棋。
最初はルールさえもわからず、入門の本を片手に一生懸命覚えた。その努力の甲斐もあって下手くそだったわたしもメキメキと力をつけていった。
そして1年後。
わたしは将棋をやめた。
ある程度打てるようになると急に興味がなくなり将棋から遠ざかる生活が続き、そして結局将棋をやめてしまった。
将棋をやめてからというもの生活は荒れに荒れた。酒にタバコ。そしてドラッグ。もう人には戻れないような気がした。
そんなとき夫がわたしの目の前にあらわれた。
将棋盤を持っていた。
そして
「将棋指そっか。」
と夫は言った。
その言葉をきいた瞬間の0.何秒かでわたしは将棋盤を踏みつけて、夫の体をめいいっぱい抱きしめた。